けいれん(てんかん)
けいれん(てんかん)

てんかんは、脳の神経細胞が突発的に異常な電気活動を起こすことで、繰り返し発作が生じる慢性的な神経疾患です。日本に約100万人(100人に1人)、世界では約6,500万人の患者さんがいるとされており、あらゆる年代で発症します。
「けいれん=てんかん」ではありません。けいれんを伴わない発作も多く、「ぼーっとする」「一時的に言葉が出なくなる」「体がピクッとする」といった症状がてんかん発作であることもあります。正確な診断が治療の出発点です。
高齢化に伴い、60歳以降に初めて発症するてんかんが増えています。特に中高年以降のてんかんは、けいれんではない発作が多く、以下のような症状として現れることがあります。
脳卒中後・認知症・脳腫瘍などが背景にあることも多く、「認知症の症状」「一過性脳虚血発作(TIA)」「睡眠障害」などと混同されがちです。「もしかして」と思ったら、まずご相談ください。脳波検査と問診で多くの場合は鑑別できます。
国際抗てんかん連盟(ILAE)は2025年4月、てんかん発作型の分類を改訂しました(Beniczky S, et al. Epilepsia. 2025;66(6):1804-1823)。2017年版の枠組みを維持しながら、臨床現場での使い勝手を高めるための6つの重要な変更が加えられています。大きく分けて焦点発作 / 全般発作 / 不明(焦点か全般か不明)/ 未分類の4種類の発作があります。
脳の特定の部位に異常な電気活動が起きる発作です。てんかん患者さんの約60%がこのタイプとされています。
意識保持焦点発作 呼びかけへの反応が保たれ、発作後に記憶も残ります。症状は発作の起きている脳の部位によってさまざまで、手足のけいれん・しびれ・においや味の異常・胃のこみ上げ感・既視感(デジャブ)・動悸・発汗などが現れます。
意識減損焦点発作 意識が遠のき、呼びかけへの反応が薄くなります。口をモグモグ動かす・手をこすり合わせるといった自動症(非意図的な繰り返し動作)が現れることもあります。本人に発作中の記憶がないことが多いです。
焦点両側強直間代発作 焦点から始まった発作が両側半球に広がり、意識消失・全身のけいれん(強直間代発作)に至るものです。以前「二次性全般化発作」と呼ばれていたタイプに相当します。2025年版でも引き続き「焦点発作の発展様式」として重視されています。
両側半球に同時に異常な電気活動が広がる発作です。
強直間代発作(tonic-clonic seizure) 突然意識を失い、全身が硬直(強直相)した後に左右対称のけいれん(間代相)が続きます。発作後に強い眠気・疲労感・頭痛が残ります。
欠神発作(absence seizure) 数秒間だけ意識が途切れてぼーっとします。けいれんを伴わないため気づかれにくく、「返事をしない」「ぼんやりしている」と周囲に思われることがあります。
ミオクロニー発作(myoclonic seizure) 手足や体がピクッと跳ねる発作で、起床直後に起きやすい傾向があります。
などがあります。
発作起始が焦点か全般か判断できない場合は「不明発作(unknown seizure)」、情報が不十分でいずれにも分類できない場合は「未分類発作(unclassified seizure)」として記録します。詳細な検査(長時間ビデオ脳波など)が進むにつれて発作型が特定されることがあります。
てんかんの原因は多岐にわたります。原因を正確に把握することが、適切な治療薬の選択と予後予測に直結します。
脳の構造的な異常が原因のもの 脳卒中(脳梗塞・脳出血)後の後遺症、脳腫瘍、頭部外傷後、脳炎・髄膜炎などの感染症後、海馬硬化症(側頭葉てんかんで最も多く見られる構造異常)、認知症に伴うてんかんなどがあります。脳卒中後てんかんは高齢発症てんかんの主な原因であり、近年増加しています。
遺伝的要因が関わるもの 特定の遺伝子変異が関与するてんかんです。一部は使用すべき薬・避けるべき薬に直接影響するため、遺伝的背景の把握が治療選択上重要になってきています。
原因が特定されないもの 脳画像や遺伝子検査で原因が見つからないタイプです。薬物療法に反応しやすく、比較的経過が良いことが多いです。
発作の状況(いつ・どんな症状・どのくらい続いたか)、頻度、誘発因子、既往歴、服用中の薬などを確認します。発作を目撃したご家族や同行者の方がいれば、ぜひ一緒にご来院ください。 患者さん本人は発作中の記憶がないことも多く、周囲からの情報が診断の精度を左右します。発作の様子をスマートフォンで動画撮影していただけると、さらに役立ちます。
てんかん診断の中心となる検査です。脳の電気活動を記録し、てんかんに特徴的な異常放電(棘波など)のパターンを確認します。当院では経験豊富な臨床検査技師が担当しており、初診当日から対応できる場合があります。治療開始後においても状態把握のために定期的な脳波検査が必要です。
てんかんの原因となる脳の構造的異常を調べるためにMRIを行います(連携施設で実施)。また、抗てんかん薬を服用中の方は血中濃度・肝機能・腎機能などを定期的に確認します。
適切な薬物療法で約70%の患者さんは発作をコントロールできます。てんかんの種類・発作タイプ・年齢・合併症・他剤との相互作用を考慮して薬剤を選択します。
現在は従来薬(カルバマゼピン・バルプロ酸・フェニトインなど)に加え、ラモトリギン・レベチラセタム・ブリーバラセタム・トピラマート・ラコサミド・ペランパネルといった新規薬が幅広く使用可能です。新規薬は従来薬に比べて薬物相互作用が少なく、副作用が改善されているものが多く、現在は新規薬から治療を開始することも増えています。「今の薬でなんとか発作は抑えられているが副作用がつらい」という方も、薬の見直しでQOLが改善できることがありますのでご相談ください。
薬を飲み始めたら、自己判断で中止しないことが非常に重要です。突然の中止は発作の悪化・重積を招くことがあります。
確実な診断のためにはより詳細な精査(長時間ビデオ脳波モニタリングやMRI以外の画像検査など)が必要になることがあります。当院では九州大学脳神経内科のてんかん専門医と連携して精査の必要性を判断し、必要な場合は九州大学病院などへ円滑に紹介します。「どこに相談すればいいかわからない」という方も、まずご相談ください。
自動車の運転 発作をコントロールできていない間は法律上運転できません。一方で、適切な治療で発作がなくなれば「2年以上発作がない」などの条件を満たした時点で運転が可能になります。就労・生活への影響が大きいため、しっかりとした発作コントロールを目指すことが重要です。
入浴 湯船への一人入浴は溺水のリスクがあります。シャワー中心にする、浴槽の湯を浅めにする、家族に声をかけてから入るなどの工夫をお勧めします。
仕事・社会生活 多くの患者さんが通常の社会生活を送っています。職場・関係者との適切な情報共有と理解が、安全に働き続けるための助けになります。
妊娠・出産 妊娠中も抗てんかん薬の継続が必要なケースがほとんどです。薬の種類・用量の調整が必要なこともあるため、妊娠を考える前から専門医へのご相談をお勧めします。
院長は京都大学大学院において4年間てんかんについて学び、その後福岡山王病院において多くのてんかん手術を担当してきた経験を持ちます。「薬で発作がコントロールできない」「より詳しく精査してほしい」といった場合には九州大学病院など専門施設と連携を行います。
毎週金曜日の午前中、九州大学脳神経内科のてんかん専門医が当院で外来を行っています。
「大学病院は予約が取りにくい」「紹介状を準備する余裕がない」という方でも、クリニックを受診するだけで専門診療を受けられます。より詳しい精査のために九州大学病院への紹介が必要になった場合は、来院している同じ専門医が窓口となるため移行が非常にスムーズです。かかりつけ医機能と専門医機能を1か所で担える体制は、福岡市内でも数少ない環境です。
てんかん専門医外来:毎週金曜日 午前中 ※担当医の変更・休診については事前にお問い合わせください。
てんかんの診断に欠かせない脳波検査を、経験豊富な臨床検査技師が常時行える体制を整えています。初診当日から検査対応できるケースも多く、診断までの時間を短縮できます。
てんかんは「繰り返す発作」が定義です。ただしMRIや脳波に異常があるなど再発リスクが高いと判断される場合は、1回目から治療を開始することもあります。まず専門医に診てもらうことが大切です。
あらゆる年代で発症します。近年は特に60歳以降の新規発症が増えており、脳卒中や認知症が背景にあるケースも少なくありません。「ぼーっとする時間がある」「一時的に言葉が出なくなる」といった症状もてんかん発作の可能性があります。
まず当院にご相談ください。毎週金曜に来院する九州大学脳神経内科のてんかん専門医と連携し、より詳細な精査(長時間ビデオ脳波モニタリング等)が必要かどうかを判断します。精査が必要な場合は九州大学病院等への紹介をスムーズに行います。
多くの場合は長期服用が必要ですが、一定期間発作がなければ減薬・断薬を検討できるケースもあります。自己判断での中止は発作悪化・重積の危険があるため、必ず医師と相談してください。
痛みはありません。頭に電極を貼り付けて脳の電気活動を記録するだけで、電気を流すことはありません。所要時間は通常20〜30分程度です。
発作がコントロールできていない間は運転できません。「2年以上発作がない」などの条件を満たせば運転可能です。薬で発作をきちんとコントロールすることが、運転再開への道につながります。