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頭痛は、誰でも一度は経験したことがある身近な症状です。多くの頭痛は、緊張型頭痛や片頭痛のように、命に関わらないものです。しかし頭痛の中には、くも膜下出血や脳腫瘍、髄膜炎など、すぐに対応しなければ命や後遺症に関わる重大な病気が隠れていることがあります。
問題は、頭痛そのものの感じ方だけでは、この「危険な頭痛」と「そうでない頭痛」を区別することが難しい場合がある点です。このコラムでは、脳神経外科医の視点から、「すぐに救急受診が必要な頭痛」「できるだけ早く専門医を受診すべき頭痛」「まずは様子を見てもよい頭痛」の違いを、具体的にお伝えします。
頭痛には2種類ある ― 一次性と二次性
頭痛は大きく2種類に分けられます。頭痛そのものが病気である「一次性頭痛」と、別の病気の症状として頭痛が起きている「二次性頭痛」です。
一次性頭痛の代表は、片頭痛と緊張型頭痛です。頻度が高く、慢性的に続くことが多いですが、命に関わることはありません。
二次性頭痛の代表は、くも膜下出血、脳出血、脳腫瘍、髄膜炎(脳を覆う膜の炎症)などが原因となるものです。頻度は一次性頭痛より低いですが、見逃すと命に直結することがあります。
大切なのは、「いつもの頭痛と同じだろう」と自己判断して、実は危険な二次性頭痛を見過ごしてしまわないことです。
すぐに救急受診が必要な頭痛
次のような頭痛は、すぐに救急車を呼ぶか、救急外来を受診してください。時間の経過が命取りになりえます。
まず「突然始まった頭痛」です。くも膜下出血を見分ける上で最も重要なのは、痛みの強さよりも「突発性」です。「突然バットで殴られたような」「人生最悪の」と表現されるほどの激痛が典型的ですが、くも膜下出血の頭痛は必ずしも非常に激しいわけではなく、比較的軽い痛みの場合もあります。大切なのは「今まで経験したことのない頭痛が、突然始まった」という点です。数秒〜数分以内に痛みが最高になる、あるいはこれまでとは明らかに違う頭痛が突然起きた場合は、くも膜下出血を疑い、すぐに救急受診してください。くも膜下出血は、通常脳の動脈にできたこぶ(動脈瘤)が破裂して起こるもので、発症直後から数時間以内の治療が予後を大きく左右します。「少し休んだら治まってきた」と感じても、それは再破裂前の一時的な改善である可能性があり、油断は禁物です。
「頭痛とともに、意識障害(意識を失う・ぼーっとする)、手足の麻痺・しびれ、呂律が回らないなどの神経症状がある」場合も、すぐに救急受診が必要です。脳出血やくも膜下出血で脳が急激なダメージを受けているサインの可能性があります。
「高熱・首のこわばりを伴う頭痛」は、細菌性髄膜炎の可能性があります。特に細菌性髄膜炎は数時間で急速に悪化することがあり、一刻を争います。
できるだけ早く専門医を受診すべき頭痛
救急を要するほどではないかもしれませんが、次のような頭痛は早めに脳神経外科・脳神経内科を早めに受診することをおすすめします。
まず、頭痛のパターンや性質に変化が生じている場合です。長年同じ頭痛に悩んでいた方でも「最近、頭痛の様子が変わった」と感じるときは要注意です。頭痛の頻度や強さがここ数週間〜数か月で徐々に悪化している場合も同様です。脳腫瘍は最初はそれほど強くない頭痛が少しずつ強くなっていくことがあります。50歳以降に初めて始まった頭痛も、新たな原因疾患を考えて検査が必要です。また、起床時・朝方に頭痛が強い場合は頭蓋内圧の上昇を示すサインのことがあり、咳やいきみ、運動で頭痛が悪化する場合も頭蓋内の問題が関わっている可能性があります。
次に、脳の血管が関わる病気による頭痛です。「ちょっと変わった頭痛」として見過ごされやすいながら、放置すると脳卒中につながりかねない2つの病気をご紹介します。
ひとつは「椎骨動脈解離」です。脳に血液を送る椎骨動脈の内壁が裂ける病気で、実際の臨床現場では比較的頻度が高く、見逃されやすい疾患のひとつです。比較的若い方(30〜50代)にも起こります。後頚部から後頭部にかけての痛みが特徴で、多くの場合片側性です。くも膜下出血のような突発性の激痛とは異なり、「気づいたら首や後頭部が痛くなっていた」というかたちで発症することも多く、急性発症として認識されにくい点に注意が必要です。痛みは数日から数週間にわたって持続する性質があり、首を動かしたときや体を動かしたときに増すことが多く、発症時に血圧が高い値を示すことがあることも知られています。首のマッサージや急な首の動き、スポーツ中の衝撃などがきっかけになることがあります。放置するとくも膜下出血や脳梗塞を引き起こす危険があるため、このような症状が続く場合は、できるだけ早く専門医を受診してください。
もうひとつは「可逆性脳血管攣縮症候群(RCVS)」です。脳の動脈が一時的に強く縮む(攣縮する)ことで激しい頭痛が起きる病気で、近年、頭痛専門医の間で見逃してはならない疾患として注目されています。30〜50代の女性に多く、片頭痛の既往がある方に多いことも知られています。最大の特徴は、「雷に打たれたような突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)」を繰り返すことです。くも膜下出血と非常に似ているため混同されることがありますが、RCVSでは同様の激しい頭痛が1か月以内に繰り返して起きる点が異なります。性行為・排便・咳・入浴・運動などがきっかけになることが多いです。多くの場合は数週間〜3か月以内に自然に回復しますが、経過中に脳梗塞やくも膜下出血を合併することがあります。また、発症初期はMRI・MRAでも異常が検出されにくいという難しさがあるため、このような頭痛を繰り返している場合は、頭痛専門医への受診と繰り返しの画像検査が重要です。
まずは様子を見てもよい頭痛
次のような特徴が当てはまる場合は、すぐに緊急受診しなくてもよいことが多いです。ただし不安があれば受診してかまいません。
「以前からくり返している頭痛で、今回も同じパターン」であること。頭痛の性質・強さ・持続時間・前後の状況が、いつもの頭痛と変わらない場合は、まずは様子を見て、かかりつけの頭痛外来に相談する形でよいでしょう。
「市販薬で改善する頭痛」も、緊急性は低いことが多いです。ただし、市販薬を月に10日以上使い続けている場合は注意が必要です(後述)。
「いつもの頭痛」でも注意が必要なこと ― 薬物乱用頭痛
慢性的な頭痛で市販薬や鎮痛薬を頻繁に使っている方に知っておいていただきたいことがあります。頭痛薬を月に10〜15日以上、3か月以上にわたって服用し続けていると、薬を飲まないと頭痛が起きるという「薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)」に陥ることがあります。
薬物乱用頭痛は、薬を飲むほど頭痛が悪化するという悪循環を生み、毎日のように頭痛が続く状態になります。「頭痛薬が効かなくなってきた」「毎日頭痛がある」と感じておられる方は、この状態に入っている可能性があります。適切に対処すれば改善できることがありますので、一度専門医に相談されることをおすすめします。
「頭痛くらい」と思わずに受診を
頭痛は日常的な症状だけに、「また頭痛か」「様子を見よう」と受診をためらいがちです。しかし、危険な頭痛の多くは「見た目が普通の頭痛」として始まります。
専門医として繰り返しお伝えしたいのは、「いつもと違う」と感じたときは躊躇せず受診してほしいということです。来てみて「異常なし」であれば、それに越したことはありません。
当院では、頭痛の診断・治療に力を入れています。CT検査、また必要に応じてMRI検査を行い、危険な頭痛を除外した上で、片頭痛・緊張型頭痛など一次性頭痛の適切な治療につなげています。「この頭痛、大丈夫だろうか」と思ったら、どうぞお気軽にご相談ください。
※本コラムは、2026年7月19日時点で公開されている情報にもとづく一般的な医療情報です。すべての頭痛に当てはまるものではなく、実際の診断・判断は医師が行います。上記に当てはまらない場合でも、心配な症状があれば医療機関を受診してください。
最終更新日:2026年7月19日

おおはら脳神経クリニック
院長 大原信司
福岡市うまれ、九州大学医学部卒業。
日頃の診療においては①患者様の話をしっかりと聞くこと、②診察と説明に十分に時間をかけること、の2点を心がけています。
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本臨床神経生理学会専門医
- 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
- 迷走神経刺激療法(VNS)資格認定医
- 定位頭蓋内脳波(SEEG)資格認定医
- バクロフェン髄注療法(ITB)資格認定医 など
- 日本脳神経外科学会
- 日本てんかん学会
- 日本定位・機能神経外科学会
- 日本臨床神経生理学会 など



