パーキンソン病の薬が効きにくくなってきたら ― 進行期に検討する治療の選択肢|おおはら脳神経クリニック|福岡市博多区の脳神経外科|てんかん・パーキンソン病

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パーキンソン病の薬が効きにくくなってきたら ― 進行期に検討する治療の選択肢

パーキンソン病の薬が効きにくくなってきたら ― 進行期に検討する治療の選択肢|おおはら脳神経クリニック|福岡市博多区の脳神経外科|てんかん・パーキンソン病

パーキンソン病に関する記事

パーキンソン病と診断され、お薬による治療を続けてこられた方の中には、「最近、薬の効き目が以前ほど続かなくなった」「効いている時間と効いていない時間の差が大きくなってきた」と感じておられる方がいらっしゃるかもしれません。

これは、決して治療がうまくいっていないということではなく、パーキンソン病の経過の中で多くの方が通る、自然な段階のひとつです。そして大切なことは、こうした時期に入っても、検討できる治療の選択肢は今、確実に広がっているということです。

パーキンソン病は、一般に経過の段階によって治療の考え方が変わってきます。診断されてしばらくは、お薬がよく効き、症状が一日を通して安定しやすい時期が続きます。その後、何年か経つうちに、お薬の効き目が一定しなくなり、効いている時間と切れている時間の差が目立ってくる時期に入っていきます。この、運動症状の波(運動合併症)が現れてくる段階を、一般に「進行期」と呼びます。

進行期に入ってきたかどうかを見分ける、ひとつの分かりやすい目安として「5-2-1基準」というものが知られています。これは、専門家の合意にもとづいて提案された簡易的な指標で、次の3つのいずれかに当てはまる場合に、進行期に入っている可能性を考えるというものです。すなわち、(5)1日に5回以上レボドパのお薬を飲んでいる、(2)お薬の効果が切れている時間(オフの時間)が1日に合計2時間以上ある、(1)困るほどのジスキネジア(体が勝手に動いてしまう症状)が1日に合計1時間以上ある、の3点です。これらに該当する場合は、お薬の調整に加えて、次にご紹介するような治療を検討する目安になるとされています。あくまで目安のひとつであり、実際の判断は症状全体を見て医師が行いますが、ご自身の状態を振り返る手がかりとして知っておくとよいでしょう。

(この5-2-1基準は、Antonini A ら(Current Medical Research and Opinion 誌、2018年)で示された考え方をもとに、Santos-García D ら(Parkinson’s Disease 誌、2020年)などで検証・紹介されているものです。)

このコラムでは、パーキンソン病が進行し、お薬の調整だけでは症状の波をおさえにくくなってきた進行期に、どのような治療が検討されるのか、その全体像をお伝えします。それぞれの治療の詳しい内容は、別のコラムでもご紹介していきます。

なぜ薬が効きにくくなるのか ― ウェアリングオフとジスキネジア

パーキンソン病の治療は、不足するドパミンを補うレボドパなどのお薬が中心です。診断されてしばらくの間は、お薬がよく効き、症状が一日を通して安定していることが多い時期が続きます。

しかし、病気が進行すると、お薬の効果が現れている時間が少しずつ短くなり、次の服用前に効果が切れて症状が戻ってしまう現象が起こりやすくなります。これを「ウェアリングオフ現象」と呼びます。さらに、お薬が効いているときに、手足や体が自分の意思とは関係なく動いてしまう「ジスキネジア」という症状が現れることもあります。

では、なぜこうした現象は、病気の初期には起こらず、進行するにつれて現れてくるのでしょうか。これには、脳の中のドパミンをつくる神経細胞の働きが関係しています。

病気の初期は、ドパミンをつくる神経細胞がまだある程度残っています。これらの細胞には、外から補ったお薬(レボドパ)由来のドパミンを、いったん取り込んで蓄え、必要なときに少しずつ放出するという、いわば「ためておくタンク」のような働きがあります。このタンクの働きがあるおかげで、血液中のお薬の量が多少上がり下がりしても、脳の中のドパミンの量は一定に保たれ、効果が一日を通して安定します。

ところが、病気が進行してこの神経細胞が減ってくると、ドパミンをためておくタンクの働きが失われていきます。すると、脳の中のドパミンの量は、飲んだお薬の血液中の量の上がり下がりに、そのまま影響されるようになります。もともとレボドパは体の中で比較的早く分解され、効果が長くは続かないお薬のため、ためておく働きが弱まると、次の服用の前に効果が切れてしまう――これがウェアリングオフが現れてくる理由です。

症状の波をおさえる鍵 ― 「途切れさせない」という考え方

このように、進行期には脳へのドパミンの刺激が「途切れ途切れ」になりやすい状態が生じます。そこで近年の進行期治療では、「ドパミンの刺激をできるだけ一定に保ち、途切れさせない」という考え方が大切にされています。これは専門的には「持続的ドパミン刺激(CDS:continuous dopaminergic stimulation)」と呼ばれる考え方で、進行期のさまざまな治療に共通する目標になっています。これからご紹介する治療は、いずれもこの「刺激を途切れさせない」ことを、さまざまな方法で目指すものです。

まずは飲み薬の工夫から

刺激を途切れさせないための工夫は、いきなり大がかりな治療に進むわけではなく、まずは飲み薬の調整から始めるのが一般的です。

たとえば、ドパミンの受け皿(受容体)を直接刺激する「ドパミンアゴニスト」と呼ばれる種類の薬には、1日1回の服用でゆっくり長く効くようにした「徐放剤」や、皮膚に貼って一日を通して少しずつ薬を届ける「貼付剤(貼り薬)」があり、これらも刺激を安定させる工夫のひとつです。さらに、レボドパの効果を長持ちさせたり、ドパミンが分解されるのをおさえたりする薬(COMT阻害薬やMAO-B阻害薬と呼ばれる種類の薬)を組み合わせることで、効いている時間を延ばす工夫も行われます。

こうした飲み薬・貼り薬の組み合わせの調整で、症状の波がうまくおさえられることも少なくありません。まずはこの段階で、主治医とよく相談しながら調整していくことになります。

飲み薬の調整だけでは難しくなってきたら

それでも、5-2-1基準で触れたように、お薬を1日に何度も飲み、調整を尽くしてもなお、オフの時間やジスキネジアがおさえにくくなってくることがあります。そうしたときに次の段階として検討されるのが、「デバイス補助療法(DAT:device aided therapy)」と呼ばれる治療です。

これは、飲み薬とは別の方法で刺激を途切れさせないようにする治療で、大きく分けて次の2つがあります。

ひとつは、薬を一定のペースで体に入れ続ける「持続注入療法」です。専用のポンプを使い、レボドパを腸へ持続的に注入する方法や、薬を皮下に持続的に注入する方法があります。飲み薬のように一回ごとの波をつくらず、刺激を安定させることを目指します。

もうひとつは、手術による「脳深部刺激療法(DBS)」です。脳の深部に細い電極を植え込み、心臓のペースメーカーに似た装置から電気で刺激を送ることで、症状をやわらげます。日本では2000年代から行われており、進行期パーキンソン病に対して長い実績の積み重ねがある、確立した治療です。

これらの治療は、それぞれに向いている状況や、利点・注意点があります。具体的にどのような治療なのか、どんな方に向いているのかは、別のコラムで詳しくご紹介します。

これからの選択肢 ― 細胞を補う治療(再生医療)

2026年には、iPS細胞からつくった細胞を脳に移植する再生医療等製品「アムシェプリ」が世界で初めて承認されました。失われたドパミン神経のもとになる細胞そのものを補おうとする、これまでとは考え方の異なる新しい選択肢です。

ただし、これは現時点ではごく限られた施設でのみ行われている段階で、すぐに多くの方が受けられる治療ではありません。詳しくは別のコラムで解説しています。

自分にはどの治療が向いているのか

ここまで複数の選択肢をご紹介しましたが、「では自分にはどれが向いているのか」は、ご本人の症状の出かた、年齢、生活の状況、お薬への反応、ご本人やご家族の希望など、多くの要素を総合して考える必要があります。どの治療にも、向いている状況とそうでない状況があり、一律に「これが一番良い」と言えるものではありません。

また、これらの進行期の治療は、その適応の判断や実施に専門的な評価を要するため、多くは入院での精密な検査や、脳神経内科・脳神経外科など複数の専門家による検討を経て決められます。

大切なのは、「薬が効きにくくなった=もう打つ手がない」ではない、ということです。むしろ、進行期に入ったときこそ、次の選択肢を専門医とともに考えていくタイミングです。

パーキンソン病でお悩みの方へ

当院では、パーキンソン病をはじめとする運動の病気の診療に力を入れています。当院院長は、アメリカにおいて約6年間DBSを専門的に研鑽した後、帰国後は京都きづ川病院・福岡山王病院において約15年間DBSを担当してきました。現在も九州大学病院脳神経外科の非常勤講師としてDBSを継続して実施しています。進行期の治療についての知識と経験をもとに、今のご自身の状態に合った選択肢を一緒に考えていきます。

「最近、薬の効きが変わってきた気がする」「これからの治療について相談したい」といったことがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。必要に応じて、より専門的な検査や治療を行う医療機関との連携も含めて、ご一緒に考えてまいります。


※本コラムは、2026年6月時点で公開されている情報にもとづく一般的な医療情報です。記載した治療法の適応や効果、安全性には個人差があり、すべての方に当てはまるものではありません。実際の治療の選択は、症状やご事情を踏まえて医師が判断します。気になる症状がある場合は、自己判断せず、主治医や専門医にご相談ください。

監修・執筆

最終更新日:2026年6月23日

おおはら脳神経クリニック 院長 大原信司(日本脳神経外科学会専門医)

おおはら脳神経クリニック
院長 大原信司

福岡市うまれ、九州大学医学部卒業。

日頃の診療においては①患者様の話をしっかりと聞くこと、②診察と説明に十分に時間をかけること、の2点を心がけています。

資格
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本臨床神経生理学会専門医
  • 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
  • 迷走神経刺激療法(VNS)資格認定医
  • 定位頭蓋内脳波(SEEG)資格認定医
  • バクロフェン髄注療法(ITB)資格認定医 など
所属学会
  • 日本脳神経外科学会
  • 日本てんかん学会
  • 日本定位・機能神経外科学会
  • 日本臨床神経生理学会 など