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頭痛で悩んでいる方の多くは、「頭痛薬を飲んでも効かない」「市販薬でごまかしているけれど、なかなか治らない」という経験をお持ちではないでしょうか。実は、頭痛には種類があり、種類によって適切な治療法がまったく異なります。間違った種類の薬を使っていると、効果がないばかりか、かえって頭痛が悪化することもあります。
このコラムでは、慢性頭痛の2大原因である「片頭痛」と「緊張型頭痛」の違いを、症状・原因・治療の観点から分かりやすく解説します。
片頭痛と緊張型頭痛 ― 何が違うのか
この2つの頭痛は、痛みの性質・場所・伴う症状・引き金など、さまざまな点で異なります。
片頭痛は、頭の片側(または両側)がズキンズキンと脈打つように痛むことが多い頭痛です。痛みは中等度〜重度のことが多く、日常的な動作(階段の上り下り、歩くなど)で悪化するのが特徴です。吐き気・嘔吐を伴うことも多く、光や音に過敏になり、暗い静かな場所で横になりたくなります。痛みは4〜72時間続くことがあります。発作の前に、視野にギザギザした光(閃輝暗点)が見えるなどの「前兆」が現れる方もいます。
緊張型頭痛は、次のような特徴を持つ頭痛です。痛みは頭全体(両側性)に及び、締め付けられるような・圧迫されるような感じ(非拍動性)が典型的です。強さは軽度〜中等度で、階段の昇降のような日常的な動作で悪化することはありません。吐き気・嘔吐は伴わず、光や音への過敏はあってもどちらか一方のみです。持続時間は30分〜7日間とされています(慢性化すると数時間〜数日、またはほぼ毎日続くこともあります)。首や肩のこりを伴うことが多く、頭蓋周囲の筋肉を押すと痛みを感じる(頭蓋周囲の圧痛)ことも特徴のひとつです。
なぜ市販薬が効かないのか
頭痛薬が効かない理由のひとつは、「片頭痛に対して緊張型頭痛用の薬を使っている」など、そもそも自分の頭痛の種類に合った薬を選べていないことです。
市販の頭痛薬の多くは、緊張型頭痛に向いた鎮痛薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)です。緊張型頭痛にはある程度効果がありますが、片頭痛には十分でないことが少なくありません。片頭痛には、トリプタン系薬剤という、片頭痛の発症メカニズムに特化した処方薬が有効なことが多く、市販薬よりはるかに効果的な場合があります。
もうひとつの理由は、薬を使いすぎていることです。市販薬も含め、鎮痛薬を月に10日以上、または片頭痛治療薬を月に15日以上、3か月以上にわたって使い続けていると、「薬物乱用頭痛(薬剤の使用過多による頭痛)」に陥ることがあります。これは薬を飲むほど頭痛が慢性化・悪化するという悪循環で、市販薬が「効かなくなってきた」と感じている方は、この状態に入っている可能性があります。
片頭痛の治療はここ数年で大きく変わった ― 発作時治療と予防治療
片頭痛の治療は、大きく「発作時治療(急性期治療)」と「予防治療」の2つに分けて考えます。発作が起きたときに素早く止める薬と、そもそも発作が起きにくくする薬は、目的も使い方もまったく異なります。近年、どちらも新しい選択肢が大幅に増えました。
発作時治療(急性期治療)― 発作を素早く止める
発作が始まったら、なるべく早い段階で服用することが大切です。我慢してから飲むと効果が出にくくなります。
従来の主力薬は「トリプタン系薬剤」です。スマトリプタン・ゾルミトリプタン・リザトリプタン・エレトリプタンなど複数の種類があります。市販薬では効かないという方でも効果が出やすく、片頭痛急性期治療の標準薬です。ただし血管収縮作用があるため、心臓や脳の血管に病気のある方には使いにくい場合があります。
2022年からは「ジタン系薬剤(レイボー 一般名ラスミジタン)」が使えるようになりました。トリプタンとは全く異なる作用機序(選択的セロトニン1F受容体作動薬)で、血管収縮作用がなく、心血管疾患のある方でも使いやすい薬です。ただし、めまい・傾眠などの中枢神経症状が現れることがあるため、服用後は自動車の運転は避けるなど注意が必要なことがあります。
2025年12月からは「ゲパント系薬剤(ナルティーク 一般名リメゲパント)」も使えるようになりました。片頭痛の発症にはCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経ペプチドが深く関わっており、ナルティークはこのCGRP受容体をブロックする経口薬です。発作時に1錠服用する急性期治療と、隔日服用による短期予防の両方に使える国内初の薬で、血管収縮作用がなく、トリプタンが効きにくい・使いにくかった方にとって新たな選択肢です。水なしで飲める口腔内崩壊錠(OD錠)という点も使いやすい特徴です。なお、このCGRPをターゲットにした薬(CGRP関連薬)は、予防治療の分野でも大きな進化をもたらしています(後述)。
予防治療 ― 発作を起きにくくする
予防治療は、月に4回以上片頭痛発作があるなど、発作の頻度が高く日常生活への影響が大きい方に検討されます。発作が起きたときに飲む薬ではなく、継続的に使用することで発作の頻度や重さを減らすことを目的とします。
従来は、降圧薬・抗てんかん薬・抗うつ薬の一部が予防薬として使われてきました。これらは片頭痛専用に開発されたわけではなく、効果には個人差もありました。
そこに大きな変化をもたらしたのが、発作時治療のところでも触れた「CGRP関連薬」です。CGRPをターゲットにした薬は、発作を止めるだけでなく、予防薬としても大きな進歩をもたらしました。
最初に登場したのが「抗CGRP抗体薬(注射薬)」です。2021年から日本でも使えるようになったエムガルティ・アジョビ・アイモビーグの3種類で、月1回または3か月に1回の皮下注射で効果が持続します。頭痛学会のガイドラインによると、発作日数が平均4〜5日程度減少するなどの効果が示されており、従来の予防薬で十分な効果が得られなかった方にも有効とされています。保険適用の条件は、月4日以上の片頭痛発作があり、既存の予防内服薬で効果が不十分な方などです。
その後、注射ではなく内服できる「CGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)」の予防薬も登場しました。ナルティーク(一般名リメゲパント、2025年発売)は2日に1回(隔日)の服用で予防効果を発揮し、同じ薬が発作時の急性期治療にも使えるという特徴があります。アクイプタ(一般名アトゲパント、2026年発売)は1日1回服用する予防専用薬です。どちらも注射が苦手な方や、内服薬でシンプルに管理したい方にとって新たな選択肢となっています。
自分の頭痛はどちらなのか ― セルフチェックの目安
次のような特徴が3つ以上当てはまる場合は、片頭痛の可能性が高いとされています。吐き気がある、光がまぶしく感じる、音がうるさく感じる、頭痛のために日常の活動に支障が出る、片側の頭痛が多い、の5項目です(ID Migraine™という簡易スクリーニングをもとにした目安です)。
ただし、片頭痛と緊張型頭痛は合併していることも珍しくなく、自己判断は難しい場合があります。「毎月何度も頭痛がある」「市販薬が効かなくなってきた」「頭痛で仕事や生活に支障が出ている」と感じておられる方は、一度専門医に診てもらうことをおすすめします。
頭痛外来で行うこと
頭痛外来では、まず頭痛の種類を正確に診断します。問診で頭痛の性質・頻度・持続時間・伴う症状・誘因などを詳しく伺います。必要に応じてCTやMRIなどの画像検査を行い、危険な二次性頭痛(くも膜下出血・脳腫瘍など)を除外した上で、一次性頭痛の診断を確定します。
その上で、頭痛の種類と頻度・重症度に応じた治療を行います。片頭痛であれば、発作時の急性期治療薬の選択(トリプタン・ジタン・ゲパントなど)と、必要に応じて予防薬の検討を行います。薬物乱用頭痛が疑われる場合は、まず乱用している薬を正しく減らす指導から始めます。
当院では、頭痛の診断・治療に力を入れています。「この頭痛、片頭痛なのだろうか」「市販薬が効かなくなってきた」「毎月何度も頭痛で困っている」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
※本コラムは、2026年6月23日時点で公開されている情報にもとづく一般的な医療情報です。実際の診断・治療は、症状やご事情を踏まえて医師が行います。気になる症状がある場合は、自己判断せず、専門医にご相談ください。
最終更新日:2026年7月26日

おおはら脳神経クリニック
院長 大原信司
福岡市うまれ、九州大学医学部卒業。
日頃の診療においては①患者様の話をしっかりと聞くこと、②診察と説明に十分に時間をかけること、の2点を心がけています。
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本臨床神経生理学会専門医
- 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
- 迷走神経刺激療法(VNS)資格認定医
- 定位頭蓋内脳波(SEEG)資格認定医
- バクロフェン髄注療法(ITB)資格認定医 など
- 日本脳神経外科学会
- 日本てんかん学会
- 日本定位・機能神経外科学会
- 日本臨床神経生理学会 など



