痙性斜頚(頚部ジストニア)とは ― 首が傾く・顔が向いてしまう病気と治療|おおはら脳神経クリニック|福岡市博多区の脳神経外科|てんかん・パーキンソン病

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痙性斜頚(頚部ジストニア)とは ― 首が傾く・顔が向いてしまう病気と治療

痙性斜頚(頚部ジストニア)とは ― 首が傾く・顔が向いてしまう病気と治療|おおはら脳神経クリニック|福岡市博多区の脳神経外科|てんかん・パーキンソン病

ジストニアのコラム

ジストニアの全体像については「ジストニアとは ― 総論」をご覧ください。

「首が傾いて元に戻らない」「顔が横を向いてしまう」「首に痛みや張りがあり、頭が一方向に引っ張られる感じがする」――こうした症状で悩んでいる方が、整形外科や内科を受診しても「異常なし」「首こりでしょう」と言われてしまうことがあります。

これらの症状は、「痙性斜頚(けいせいしゃけい)」という神経疾患が原因となっている可能性があります。痙性斜頚は頚部ジストニアとも呼ばれ、ジストニアの中で最も多いタイプのひとつです。このコラムでは、痙性斜頚の症状・原因・治療についてお伝えします。

痙性斜頚(頚部ジストニア)とはどのような病気か

痙性斜頚(頚部ジストニア)は、首や肩の筋肉が意思とは関係なく異常に収縮し、頭部が不自然な位置・姿勢に引っ張られる状態が続く病気です。ジストニアの一種で、局所性ジストニアの中では最も多いとされています。

症状の現れ方は様々で、顔が横を向いてしまう(回旋型)、首が横に傾く(側屈型)、頭が前に傾く(前屈型)、後ろに傾く(後屈型)、あるいはこれらが組み合わさった混合型など、患者さんによって異なります。また、頭部が引っ張られるような持続的な姿勢のずれのほか、不規則に動く振戦(ふるえ)を伴うこともあります。

痛みを伴うことが多い点も、痙性斜頚の特徴のひとつです。首・肩・後頭部の痛みや張り感が続き、日常生活(仕事・運転・食事など)に大きな支障をきたします。

感覚トリック

痙性斜頚には、「感覚トリック」と呼ばれるジストニアに特徴的な現象があります。あごや頬に手を触れる、頭の後ろに手を当てるなど、特定の動作をすると一時的に症状が軽快することがあります。

この現象はジストニアに特徴的なもので、診断の重要な手がかりになります。「手を当てると楽になる」という経験をお持ちの方は、専門医に伝えてください。

痙性斜頚の原因

痙性斜頚の原因は、多くの場合特定できません(特発性・一次性)。30〜50代に発症することが多く、やや女性に多い傾向があります。一部では遺伝的な要因が関与している場合もあります。

二次性(他の原因による)のものとしては、薬剤(フェノチアジン系・ブチロフェノン系などの向精神薬)の副作用、頚椎疾患、外傷、Wilson病などが原因となることがあります。これらが疑われる場合は、原因の特定と治療が重要です。

なぜ診断が遅れやすいのか

痙性斜頚は、診断までに時間がかかることが少なくありません。首の異常な姿勢・痛みという症状から、頚椎症・筋緊張性頚部痛・寝違えなどと混同されやすいためです。画像検査(MRI・CT)では多くの場合異常が検出されず、「検査で異常がないから問題ない」と見過ごされることがあります。

また、発症初期は症状が軽く、「少し首が傾いている程度」と本人も周囲も気づきにくいことがあります。症状が慢性化・固定化する前に専門医を受診することが、治療効果の点からも重要です。

痙性斜頚の治療

痙性斜頚の治療は、ボツリヌス治療が第一選択です。

ボツリヌス治療は、異常収縮している首・肩の筋肉(胸鎖乳突筋・僧帽筋・頭板状筋など)にボツリヌス毒素を注射し、過剰な筋収縮をやわらげる治療です。痙性斜頚に対して保険適用で行うことができます。現在、痙性斜頚に保険適用のあるボツリヌス製剤は2種類あり、症状や必要な投与量などに応じて選択します(製剤の違いについては、ボツリヌス治療のコラムで詳しく解説しています)。効果は通常3〜4か月程度持続し、定期的な注射を継続することで症状を安定してコントロールできるようになる場合があります。

首・肩の筋肉は深部にあるものも多く、正確な部位への注射が重要です。当院では筋肉の部位に応じてエコー(超音波)を用いて筋肉を画像で確認しながら注射を行っており、治療効果が安定しやすく、不必要な部位への注射リスクを低減できます。

ボツリヌス治療で十分な効果が得られない場合には、抗コリン薬・クロナゼパムなどの内服薬を組み合わせることがあります。また難治性の痙性斜頚に対しては、脳深部刺激療法(DBS)などの定位脳手術が有効な場合があります。当院院長は九州大学病院との連携のもと、適応患者さんに対してDBSを行っています。治療法ごとの詳しい内容は「ジストニアの治療 ― ボツリヌス治療と定位脳手術(DBS・凝固術)の選び方」をご覧ください。

当院での痙性斜頚診療について

当院では、痙性斜頚(頚部ジストニア)の診断・ボツリヌス治療・内服薬の処方を行っています。ボツリヌス注射は必要に応じてエコーで筋肉を確認しながら行っています。内服薬やボツリヌス治療で十分な効果が得られない場合には、DBSを含む定位脳手術の適応を九州大学病院と連携して検討する体制をとっています。当院の診療内容は「手足のつっぱり・こわばり」のページもご覧ください。

「首が傾いて戻らない」「顔が横を向いてしまう」「首の痛みと姿勢の異常で悩んでいる」という方は、お気軽にご相談ください。セカンドオピニオンも承っています。


※本コラムは、2026年9月時点で公開されている情報にもとづく一般的な医療情報です。実際の診断・治療は、症状やご事情を踏まえて医師が行います。気になる症状がある場合は、自己判断せず、専門医にご相談ください。

監修・執筆

最終更新日:2026年10月4日

大原 信司(おおはら しんじ)

おおはら脳神経クリニック
院長 大原信司

福岡市うまれ、九州大学医学部卒業。

日頃の診療においては①患者様の話をしっかりと聞くこと、②診察と説明に十分に時間をかけること、の2点を心がけています。

資格
  • 日本脳神経外科学会専門医
  • 日本臨床神経生理学会専門医
  • 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
  • 迷走神経刺激療法(VNS)資格認定医
  • 定位頭蓋内脳波(SEEG)資格認定医
  • バクロフェン髄注療法(ITB)資格認定医 など
所属学会
  • 日本脳神経外科学会
  • 日本てんかん学会
  • 日本定位・機能神経外科学会
  • 日本臨床神経生理学会 など