
「最近、まぶたが重くて目が開けにくい」「まばたきが増えた」「まぶしさや目の不快感がある」「気づいたらまぶたが閉じてしまっている」――こうした症状に悩んでいる方が、眼科を受診しても「異常なし」と言われ、原因が分からないまま過ごしていることがあります。
このような症状は、「眼瞼けいれん」という神経疾患が原因となっている可能性があります。眼瞼けいれんはジストニアの一種で、適切な治療によって症状をコントロールできる可能性のある病気です。このコラムでは、眼瞼けいれんと、それに関連したメージュ症候群について解説します。
眼瞼けいれんとはどのような病気か
眼瞼けいれん(がんけんけいれん)は、まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)が意思とは関係なく過剰に収縮することで、目が閉じてしまったり、まばたきが増えたりする病気です。ジストニアの一種で、脳からの信号の異常によって引き起こされます。
眼瞼けいれんは「けいれん」という名前がついていますが、顔面けいれんのようなぴくぴくとした動きとは異なります。まぶたがギュッと閉じてしまう、または閉じた状態が続いてしまうという症状が特徴です。基本的には両眼に症状が現れますが、左右差があることも少なくありません。
初期症状は、まばたきが多い、まぶしさや目の不快感、過剰な瞬きなどで始まります。症状が進むと、目を開けていることが困難になり、重症になると事実上の機能的失明状態になることもあります。
眼瞼けいれんの原因と特徴
眼瞼けいれんの原因は、多くの場合特定できません(特発性)。中高年の女性に多く見られる傾向があります。一方で、向精神薬(フェノチアジン系・ブチロフェノン系)などの薬剤が原因となる薬剤性眼瞼けいれんもあります。
眼瞼けいれんには「感覚トリック」と呼ばれる特徴的な現象があります。目の周りや顔に触れる、眼鏡をかける、あごを触るなど、特定の動作をすると一時的に症状が軽快することがあります。この現象はジストニアに特徴的なもので、診断の参考になります。
また、明るい場所(屋外・蛍光灯下)で症状が悪化し、暗い場所や夜間に改善することが多いです。テレビや読書など、目を使う作業で悪化することも特徴のひとつです。
メージュ症候群とは
メージュ症候群(Meige症候群)は、眼瞼けいれんに加えて、口・あご・舌・顔の下半分のジストニアが合わさった状態です。口が勝手に開いてしまう、舌が前に出てしまう、あごが動いてしまうなどの症状が眼瞼けいれんと同時に現れます。
分節性ジストニアに分類され、眼瞼けいれん単独よりも治療が難しいことがあります。ボツリヌス治療は眼瞼部分には有効ですが、口・あご・舌への注射は技術的に難しく、また保険適用外の部位も含まれるため、内服薬との組み合わせが必要になることがあります。
眼瞼けいれんはなぜ見逃されやすいのか
眼瞼けいれんは、診断までに時間がかかることが少なくありません。その主な理由は次の通りです。
まず、初期症状がドライアイ・アレルギー性結膜炎・逆さまつ毛などと似ているため、眼科でこれらの治療を受けても改善しないというケースが多くあります。「眼科で異常なしと言われた」という方に眼瞼けいれんが見つかることは珍しくありません。
次に、神経疾患(ジストニア)ではありますが、脳のMRI・CTで異常が出ないことが多いため、「検査で異常がないから問題ない」と見過ごされることがあります。
また、症状が軽いうちは本人も「気のせい」「疲れのせい」と思ってしまいがちです。しかし放置すると徐々に悪化することが多く、早期の診断・治療が重要です。
眼瞼けいれんの治療
眼瞼けいれんの治療は、ボツリヌス治療が第一選択です。
ボツリヌス治療は、まぶたを閉じる筋肉(眼輪筋)にボツリヌス毒素を少量注射し、過剰な筋収縮をやわらげる治療です。眼瞼けいれんに対して保険適用で行うことができます。効果は通常3〜4か月程度持続し、効果が薄れてきたタイミングで再注射を行います。定期的な注射を継続することで、症状を安定してコントロールできるようになります。
当院では、眼瞼けいれんに対するボツリヌス注射を行っています。まぶた周囲の眼輪筋は表在性の筋肉であり、解剖学的な知識にもとづいて正確な部位に注射することが重要です。
ボツリヌス治療で十分な効果が得られない場合には、抗コリン薬などの内服薬を組み合わせることがあります。また、難治性の眼瞼けいれんに対して、脳深部刺激療法(DBS)が検討されることもあります。
顔面けいれんとの鑑別
眼瞼けいれんと症状が似ている病気として、顔面けいれんがあります。顔面けいれんは、顔の半分がぴくぴくと動く病気で、目の周囲から始まって口元まで広がることが多いです。眼瞼けいれんとは原因(脳神経の血管圧迫)が異なる別の疾患ですが、眼瞼けいれんは初期には片側だけの場合もあり鑑別が困難なことがあります。
鑑別の参考になる点として、眼瞼けいれんでは羞明(まぶしさ・光への過敏)が目立つことが多く、また眉間(皺眉筋)や鼻の付け根(鼻根筋)の収縮が目立つことが多い印象です。顔面けいれんとの詳しい違いや治療については、別のコラムで解説しています。どちらも当院で対応しています。
当院での眼瞼けいれん診療について
当院では、眼瞼けいれん・メージュ症候群の診断・ボツリヌス治療を行っています。「眼科で異常なしと言われたが目が開けにくい」「まぶたが勝手に閉じてしまう」という方は、お気軽にご相談ください。
※本コラムは、2026年8月時点で公開されている情報にもとづく一般的な医療情報です。実際の診断・治療は、症状やご事情を踏まえて医師が行います。気になる症状がある場合は、自己判断せず、専門医にご相談ください。
最終更新日:2026年8月20日

おおはら脳神経クリニック
院長 大原信司
福岡市うまれ、九州大学医学部卒業。
日頃の診療においては①患者様の話をしっかりと聞くこと、②診察と説明に十分に時間をかけること、の2点を心がけています。
- 日本脳神経外科学会専門医
- 日本臨床神経生理学会専門医
- 日本定位・機能神経外科学会技術認定医
- 迷走神経刺激療法(VNS)資格認定医
- 定位頭蓋内脳波(SEEG)資格認定医
- バクロフェン髄注療法(ITB)資格認定医 など
- 日本脳神経外科学会
- 日本てんかん学会
- 日本定位・機能神経外科学会
- 日本臨床神経生理学会 など



